最年少でのタイトル挑戦の記録更新がなるか。注目の対局に臨んでいる2人の棋士について、取材を重ねてきた記者が振り返る。
拡大する棋聖戦の挑戦権を懸けて戦う藤井聡太七段(右)と永瀬拓矢二冠=2020年6月4日、東京都渋谷区、代表撮影・日本将棋連盟
東京都渋谷区の将棋会館。数々の名勝負が繰り広げられてきた特別対局室で、マスク姿の2人が集中力を高めていた。4日午前10時。両者が一礼し、戦いの火ぶたが切られた。
第91期棋聖戦の挑戦者を決める決勝トーナメント決勝に勝ち進んだ永瀬拓矢二冠(27)と藤井聡太七段(17)。勝者が、渡辺明棋聖(36)=棋王、王将とあわせ三冠=への挑戦権を獲得する。藤井が勝てば、屋敷伸之九段(48)が持つタイトル挑戦の史上最年少記録を31年ぶりに更新することになる。
両者が公式戦で顔を合わせるのはこれが初めて。しかし、非公式戦では対戦がある。2017年、デビュー直後の藤井がトップ棋士や若手ら7人と戦った「藤井聡太四段 炎の七番勝負」だ。藤井は羽生善治九段(49)らを破って6勝1敗の成績を残し、大きな話題を呼んだが、唯一の黒星をつけたのが永瀬だった。
永瀬は先輩の面目を保つ一方、藤井の強さを肌で感じていた。その後、永瀬の誘いで、両者は「VS(1対1の練習対局)」を始めることになる。藤井が愛知県在住のため頻繁には行えないというが、共に鍛錬を続けている。
挑戦権を懸けた一戦を翌日に控えた3日。私は、職場の机の中から17年の取材ノートを探し出した。「公式戦29連勝」などの大活躍を見せた藤井について、まだ六段だった永瀬に話を聞いたことを思い出したからだ。
「(炎の七番勝負での勝利は)…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル